書いてあること
- 主な読者:社員のワークライフバランスを確保し働きやすい職場作りをしたい経営者、助成金を受給しつつ働き方改革を進めたい経営者
- 課題:勤務間インターバル制度は助成金の対象だが、制度としては使いにくい?
- 解決策:制度はシンプル。終業から始業までに一定の休息時間を確保できるかを確認する
1 「勤務間インターバル制度」は助成金の対象
リモートワークやフレックスタイム制などを導入している会社では、社員の過重労働が心配です。既に残業削減はさまざまな方法で試行錯誤されていることでしょうから、この記事では別の視点から、「勤務間インターバル制度」を紹介します。
勤務間インターバル制度とは、労働時間等設定改善法で定められている
社員が終業してから次に始業するまでに、一定時間の休息を取ることを促進することで、社員の生活時間や睡眠時間を確保する制度(実施は努力義務)
です。就業規則等で休息時間数を設定し、終業から次の始業までの間隔が休息時間数に満たなければ、その時間数分、労働したものとみなしたり、翌日の始業時刻を繰り下げたりします。
休息時間数が13時間の勤務間インターバル制度のイメージは次の通りです。
図表1では、本来の始業時刻は9時ですが、前日に21時まで働いたので、翌日の勤務開始は10時(前日の終業時刻から13時間後)からとしています。また、本来の始業時刻である9時から10時までの1時間については労働したものとみなしています。なお、労働したものとみなさずに、単に始業時刻を後ろ倒しにするパターンもあります。
勤務間インターバル制度は働き方改革を実現するための取り組みですが、いまひとつピンとこないこともあって導入は進んでいません。ただし、
ことをご存じでしょうか。助成金の支給を受ける場合、事前に所定の「交付申請書」を事業実施計画書などとともに、所轄都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に提出します。2023年度の助成金の申請期限は2023年11月30日までです。
2 勤務間インターバル制度を導入する際のポイント
1)休息時間数の考え方
過重労働を防止する上で、休息時間数が長いに越したことはありません。とはいえ、いきなり長い休息時間数で運用するのは難しいので、最初は短めに休息時間数を設定し、状況を見つつ徐々に延長していくのがよいでしょう。ただし、休息時間数が9時間未満だと、働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)の対象外になってしまうので注意が必要です。
また、一度設定した休息時間数を安易に短くするのは避けるべきです。とはいえ、取引先との商談や社内の重要な会議などで、休息時間の確保が難しくなるケースもあります。こうした場合は、社員から事前に申請させるようにした上で、社員の体調維持に配慮しましょう。
2)就業規則の規定例
休息時間数を9時間とした場合の就業規則の規定例を紹介します。なお、今回の事例では休息時間数を確保するために、本来の始業時刻から休息時間の満了時刻までは労働したものとみなし、その時間分の賃金は減額しないものとします。社員に有利な規定となっていることをご認識ください。
【規定例】
【第◯条(勤務間インターバル制度)
1)会社は社員に対し、1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに、少なくとも9時間の継続した休息時間を与える。ただし、災害その他やむを得ない事情がある場合においてはこの限りでない。
2)前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間については労働したものとみなし、賃金は減額しない。
この他に、年末年始や業務の緊急性など特別な事情が生じた場合には、適用を除外する定めを設けるなど、柔軟に対応することも可能です。
3 導入している会社が少ないのはなぜ?
最後に補足として、なぜ勤務間インターバル制度の導入が進んでいないのかを紹介しておきます。興味があれば、ご確認ください。
勤務間インターバル制度を「導入している」と回答した会社はわずか5.8%です。そして、勤務間インターバル制度を導入していない理由は次の通りです。
導入しない理由としては、「超過勤務の機会が少なく、当該制度を導入する必要性を感じないため」という会社が多く、「人員不足や仕事量が多いことから、当該制度を導入すると業務に支障が生じるため」など、今の体制に勤務間インターバル制度が合わない会社もあるようです。