⇦ 戻る

良い睡眠は健康管理の第一歩

更新日:
2023
11
24

書いてあること

  • 主な読者:睡眠不足などの睡眠に関連した悩みを持つビジネスパーソン
  • 課題:睡眠不足を解消したい、良い睡眠を取って健康になりたい
  • 解決策:睡眠サイクルを崩さないなど快眠のための8つのポイントを紹介

1 日本人の4人に1人が睡眠不足。睡眠不足による経済損失は年間15兆円

睡眠は、人が生きる上で欠かせないものです。睡眠によって疲労がたまった脳や体を休め、心身のバランスを取っているのです。この他にも、睡眠には成長ホルモンを分泌し、体の成長を促す、体の免疫力を高める、精神を安定させるなどの役割があります。

しかし、日本人の4人に1人が睡眠不足だとされています。また、睡眠不足による生産性の低下などにより、年間15兆円の経済損失があるとの試算もあります。こうした背景もあり、個人や従業員の健康を気遣う企業が、改めて睡眠への関心を高めています。

2 睡眠不足がもたらすリスク

1)睡眠不足が企業にもたらす悪影響

多くの人には睡眠不足の経験があると思いますが、実際に睡眠不足は私たちの体にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、身体能力を低下させるとされます。例えば、病気が悪化したり、事故やミスをしがちになったりするなど、さまざまな悪影響を及ぼします。厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」では、人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界であり、起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下するとした研究結果を紹介しています。

また、睡眠不足が連日続くと作業能率はさらに低下し、もし睡眠不足が6~7日間続いた場合、その後3日間は十分な睡眠時間を確保しても日中の作業能率は十分に回復しないようです。

このような睡眠不足による疲労の蓄積を防ぐためには、毎日十分な睡眠時間を確保することが重要になります。

2)ストレスチェックの義務化で関心が高まる睡眠

従業員50人以上の事業所にはストレスチェックの実施が義務付けられています(従業員50人未満の事業所は努力義務)。これは、うつ病などメンタルヘルス不調を未然防止するための制度です。

従業員のストレス状態の確認は、従業員が心身共に健康で意欲的に働くことのできる職場を実現するために、重要な役割を果たすと考えられています。睡眠とうつ病は密接に関連しているという意見もあるため、ストレスチェックなどと併せて、従業員の睡眠に気を配ることは、メンタルヘルス不調の未然防止策としても重要でしょう。

3 昼寝の効能

朝早くから活動を続けている人間の脳は、覚醒してから5~6時間もたつと疲労が蓄積されていきます。特に13~15時前後の時間帯は、昼食を取ったことと相まって、疲労と眠気がピークに達します。昼食後の数時間は生産性や判断力が低下し、ミスや非生産的な行動(ボーッとする、あくびをするなど)をする確率が高まります。

このときにコーヒーを飲んだり体を動かしたりして、午後の仕事に備える人も多いと思いますが、昼寝も効果的です。ごく短時間(15~30分)の昼寝は脳を活性化させ、判断力や集中力を回復させます。その結果、ミスの減少、生産性の向上、事故予防、心身の健康増進などさまざまな効能が期待できます。ただし、昼寝が1時間を超えてしまうと熟睡状態に入ってしまい、逆に疲労がたまることがあるので注意しましょう。

企業の中には、昼寝(シエスタ)休憩を設けていたり、仮眠が取れるスペースなどを設けていたりする場合があります。

4 快眠のための8ポイント

1)規則正しい生活を送る

  • 毎日同じ時刻に眠り、決まった時間に起きると、体内に睡眠のリズムがつくられ、不眠解消につながる
  • 休日もそのサイクルを崩さない
  • 睡眠のリズムが狂っている場合は、太陽の光を浴びるとよい

2)朝食をしっかり食べる

  • 朝食は覚醒後のエネルギーとして利用されるため、しっかり摂取する。朝食を抜くと、その分のエネルギーを体内で補完しなくてはならないため、体に負担が掛かってしまう
  • 食事を3度きちんと取ると、睡眠リズムが回復し、健康的な生活サイクルがつくられる

3)寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり漬かる

  • ぬるめのお風呂に20~30分ほどゆっくり漬かることで、心臓に負担を掛けることなく体を温め、心身共にリラックスした状態をつくる
  • 市販の入浴剤や防水機能が付いた音楽プレーヤーなどを活用することでリラックス効果を高める

4)適度な運動をする

  • 適度な運動は熟睡を促す効果がある
  • 過剰な運動は心身を活発にするため、寝る前には控える

5)昼寝をする

  • 昼寝は午後の活動を活性化させる効能があり、夜の熟睡につながる
  • 時間帯は13~15時が望ましい。あまり遅い時間に昼寝をすると夜に眠れなくなる
  • 睡眠時間は15~30分くらいを目安にすること。1時間以上寝ると、逆に疲労がたまってしまう

6)お茶やコーヒーの量を減らす(カフェインを減らす)

  • カフェインには覚醒作用があるので、寝る前に摂取すると不眠の原因になる
  • カフェインを摂取し過ぎると、頭痛やめまい、胃腸障害などを引き起こすので注意する

7)睡眠環境(枕、ベッド、照明、音など)を改善する

  • 頭の位置や首の角度を考慮した枕、適度な硬さのベッド、柔らかく周辺を照らす間接照明、リラックスを促す音楽など、睡眠環境を自分の嗜好や体に合うように工夫する

8)寝ることを意識し過ぎない

  • 「寝ないと体がもたない」「たっぷりと睡眠を取らないと病気になる」などと強く意識し過ぎてしまうとそれが自己暗示となり、かえって寝られなくなるので、横になったら寝ることを意識せず、音楽を聴いたり、体の力を抜いたりするなどしてリラックスするとよい

これらの方法は、人によっては効果を発揮しなかったり、逆に眠りを妨げる可能性もあったりするので、自分に合った方法を見つけ、快眠につなげていくとよいでしょう。

5 寝酒は逆効果

寝付けないときに寝酒を飲むという人もいるでしょう。実際、アルコールには催眠作用があり、寝付きは良くなります。ただし、アルコールには覚醒作用もあるため、寝付いたものの、眠りが浅くなってしまうことがあります。

浅い眠りとは、すなわち睡眠の質の低下です。例えば、二日酔いの朝など寝付いたのは遅い時間なのになぜか目が覚めてしまうことがありますが、これはアルコールによる覚醒作用です。「寝付けないから寝酒」というのは実は逆効果なのです。

6 睡眠薬は必ず医師の判断で

最後に、睡眠薬(睡眠導入剤)を飲むときの注意点を紹介します。睡眠不足が続くと生産性や判断力が鈍るため、ビジネスパーソンの中には睡眠薬を利用して無理やり眠るという人もいるかもしれません。

しかし、睡眠薬はあくまで薬剤であり、その使用法を誤ると心臓や血管に多くの負担を与えたり、依存症になったりしてしまうため、使用の際は医師と相談し、正しい服用を心掛けなくてはなりません。決して自己の判断で服用量を増やしたり、アルコールと一緒に服用したりしないように注意しましょう。

以上(2020年6月)

pj60108
画像:unsplash